常識的で何か問題でも?/内田樹

 

 

 『日本辺境論 (新潮新書)』等の著作で知られる思想家の内田さんが『AERA』の連載で2014年9月~2018年7月に書かれたものをまとめた本です。

 時事的なモノがネタになっているので、こういう本って全体としてどうのこうのというのが非常に難しいことが多いのですが、内田さん自身がかなり思想的に筋が通っている感じで、おっしゃられていることが一貫されているように思われます。

 内田さんはかつては大学で教鞭を取られていたということなのですが、現在はすべて引かれて神戸で登場を主催される武道家だそうですが、武道家というのは起こりうるすべてのリスクを想定した上でどう対処するかを考えるべきで、その理クス検討の過程自体を、想定した現象が起こらなかったからと言ってムダだったというのはおかしいとおっしゃっていて、如何に効率が求められるといっても、そこを省略すべきではないとお考えのようです。

 そういう思考壁のある人から見ると、多くの日本人が大した志向もなく流されているのを見て、さぞ嘆かわしく思われているんだろうな、というのが端々から感じられます。

 ここ数日安倍政権に批判的な著作を連続して取り上げているのですが、この本もそういう色があって、内田さん自身そのトピックばかりをまとめて掲載するとグチっぽくて気に入っておられないようですが、「知の怪人」佐藤優さんが安倍首相のことを“反知性”と度々おっしゃっているのを見ると、内田さんも安倍首相のそういう思想的に無秩序なところに生理的な嫌悪感を抱いているんじゃないかと…