知の越境法/池上彰

 

知の越境法 「質問力」を磨く (光文社新書)

知の越境法 「質問力」を磨く (光文社新書)

 

 

 あの池上さんが如何にして「池上彰」になったかを教えてくれる
本です。

 旧来日本では専門家を尊重し、ジェネラリストを軽視する傾向が強いのですが、様々な事象が複雑に絡み合い、グローバリズムが浸透した現代においては狭い範囲の専門性に依拠していては、目の前の事象に対応しきれないようになっているということで、池上さんは積極的な「越境」を勧められています。

 ご自身も自らの意図していたところとは違った分野で記者を務められたり、当時としては異例の、記者でありながらキャスターを務めるなど様々な「越境」を経たからこそ「池上彰」となったんだとおっしゃられます。

 そのために重要なのがリベラルアーツだとおっしゃられておられて、それを蔑ろにしてきた日本人がグローバルビジネスの世界で軽視されていることを指摘されています。

 文科省は“実学”ばかりを重んじて“教養”を軽視してきており、そういった教養を重んじる意図だったはずのゆとり教育も目先の学力の低下で批判を受けたら、一瞬で撤回され、逆に今度は“実学”を必要とするはずの産業界から、出来上がってきた学生の教養の無さを批判されているという体たらくです。

 基本的な“教養”を厚くすることで専門家ともかなりディープな議論は可能だということを池上さんは自ら証明してきており、今後の大学教育の改革ではそういった方向性が強く期待されます。