「身体を売る彼女たち」の事情/坂爪真吾

 

 

 性愛関連の著作で知られる坂爪さんが性風俗で働く女性たちの葛藤を紹介した本です。

 坂爪さんは性風俗で働く女性たちを支援する「風テラス」を運営されていて、そういう女性たちに積極的にコミットされている中で、世間のステレオタイプ的なイメージとは異なり、必ずしも追い詰められたりとか、おカネの工面のために性風俗に従事するというワケではなく、ある意味積極的に性風俗で働くことを選択しているという側面が少なからずあるようです。

 長い目で見ると結局積極的に性風俗で働くことを選択した女性たちも、追い込まれることになりがちだということで、「冷静な意見」として性風俗との関連を断つことを周囲から進められるけれども、彼女たちからすれば必然の選択を積み重ねた結果、世間的に見れば不合理な選択をしたようにみえるということも多いようです。

 役所などに支援を求めても性風俗で働いていることが支援を受けることの阻害要因となることも多いようで、性風俗と縁を切るようにとの社会的な圧力はあるのですが、性風俗がある意味、セーフティネットとして機能しているという側面もあり、当人にとってみれば性風俗と縁を切ることが現実的な選択肢ではなくなってしまっているということで、性風俗に従事しながら現状を少しずつ改善して行こうということで坂爪さんは「風テラス」での支援に取り組んでいるようです。

 そういう活動について性風俗の助長だと非難する向きもあるようですが、何らかのカタチで困難に陥っている人の現状を少しでも改善しようとする手段があるということは一定の意義があることなんじゃないかと思います。