素人力/長坂信人

 

素人力 エンタメビジネスのトリック?! (光文社新書)

素人力 エンタメビジネスのトリック?! (光文社新書)

 

 

 『ROOKIES』や『モテキ』などの大ヒット作を手掛けた映像制作会社の代表を務められているプロデューサーの方が映像制作の裏側を紹介されます。

 長坂さんが代表を務められているオフィスクレッシェンド出世作である『TRICK』は当初の制作予算を大幅に超過し、かなり金策に苦労されたということなのですが、その後のシリーズ化につながる大ヒットによりギリギリのところで事なきを得たということだったそうです。

 金に糸目をつけずにいいモノを作りたい芸術家肌の映画監督と、限られた予算の中でやりくりして欲しい映像プロデューサーは、ある意味利益相反の立場である部分があるのですが、プロデューサー側としてもいい作品を送り出したいというキモチに変わりはないので、如何にしてそういったところの折り合いをつけていくかということが重要なようで、綿密なコミュニケーションを通して日頃からの信頼関係を醸成していることが重要なようです。

 「素人力」というタイトルは、映像制作についてほぼシロウトの状態でありながら映像制作会社の代表に祭り上げられてしまったということから来ているようで、未だ方法論について逡巡するところがあるようですが、そういうシロウト的な感覚を持ち続けていることが武器になっているんじゃないかという部分もアリ、成功要因となっているのかも知れません。

 日頃何気なく見ている映像に、かくも多くのモノが込められているのかと、軽いタッチで書かれているだけに、より深い感慨を覚える内容でした。