中学・高校の教科としての日本史では、どうしても入試に対応する必要があって記憶偏重となってしまいがちですが、本郷先生は日本史においても「知っている」ことよりも、どうしてそうなったか「考える」ことの方が遥かに重要だとおっしゃいます。
ということでこの本では編集者から「信」「血」「恨」など漢字一文字の“お題”を出してもらい、それを手掛かりに本郷先生が日本史上のことを語られるという構成になっています。
サラッと読むとエッセイ調で“ふーん”で終わってしまいかねないところですが、これまで日本史で“常識”だと言われてきたことも、合理的に考えるとムリがあることが少なからずあるようで、徐々に“定説”が覆されて、中学・高校で教えられる内容が変わって来ているのも、新たな発見を反映したものだけではなく、そういった側面もあるようです。
だからこそ「知っている」だけでは、その内容が覆されたらムダだけど、なぜそうなったか考えておけば、置き換わった新史実についても、あ、そういうことだったんだ、と腑に落ちて、新たな知識になるということです。
最近の歴史の研究では、それまでの政治や権力一辺倒ではなく、経済などの社会環境を重視する人が多くなているようですが、このような社会の胎動みたいなものを捉えることで躍動感を感じさせようとするののが多くみられ、より多くの人が日本史に親しめるようになるのではないかと期待しています。