ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか/熊谷徹

 

 

 長らくドイツ・ミュンヘンに住んでいるジャーナリストである著者が、ドイツ人のおカネに振り回されないライフスタイルを紹介されます。

 熊谷さんによるとドイツ人があまりおカネに執着しないのは、人生が充実していて、あまり物質的な欲望を満たすことへの興味が日本人と比べると低いからだとおっしゃいます。

 それに比べて日本人はロクに休みを取ることもできず、長時間労働を強いられて、そのココロのスキマを埋めるのは買い物になってしまっているんじゃないかと指摘されています。

 じゃあ、なぜドイツ人が余裕を持った生活ができているかというと、目的を果たすのに必要なモノを見極めてムダなことをしないようにしているからだとおっしゃいます。

 日本では“痒い所に手が届く”サービスがフツーですが、それを実現するためにかなりのボリュームの“追加”の労働を強いられている人がいて、社会全体の過重な労働につながり、人生の余裕を奪っているということです。

 だから日本でもホンの少しずつの“不便”を許容することにより、社会全体での“人生の余裕”を楽しもうということを提唱されているのですが、そういう“過重労働”を「お・も・て・な・し」って賛美しているようじゃ、日本は真逆の方向に向かっているじゃないかと悲観的にならざるを得ません…