幻想の経済成長/デイヴィッド・ピリング

 

幻想の経済成長

幻想の経済成長

 

 

 アメリカのフィナンシャル・タイムズ紙勤務で、日本駐在経験もある方が、“幸福”を測る指標としてのGDPについて語られます。

 元々“幸福”を測る指標としては、様々な問題点を指摘されてきたGDPですが、創始者と言われるクズネッツ自身はかなりそこを意識されていたようで、犯罪や戦争でもたらされる経済効果について、人間の“幸福”に寄与しないとして排除しようとされたようなのですが、計上する上での恣意性の排除に問題があるとして、後輩の経済学者であるケインズなどからの批判で、恣意性を除いたカタチでの指標にされてしまったという側面があるようです。

 当初から家事労働の寄与が取り込まれていないなどの問題点があり、経済指標としての不完全性も指摘されてきたGDPですが、技術革新に伴う効率向上がGDPの減退につながるとか、米国の社会保険の不備による医療収入の増大が医療費支出に伴う経済活動によるGDPの増大につながるなど、GDPの増減が人間の“幸福”の逆に作用するといった側面も顕著になってきているということです。

 ということで、GDPが“幸福”を測る尺度としては大きな疑問を差し挟まれながらも、それに代わる指標が出てこないことで生きながらえているということです。

 こういうのも従来の“システム”の限界を痛感させられる気がします…