横田空域/吉田敏浩

 

 

 2020年の東京オリンピック開催を受けて羽田空港の発着便数を増やそうとした際、飛行ルートの制限の関係で浜松町辺りをかなり低空で飛行するということが報道された関係で「横田空域」のことを知られた方もおられるかと思いますが、その驚くべき現状を詳細に紹介したのがこの本です。

 ワタクシ自身はずっと以前に元外交官の孫崎亨さんの『戦後史の正体』で「横田空域」のことを紹介されていたのを読んで初めて知り、国売ったとも言える当時の為政者の判断に憤りを覚えたのですが、未だ日本の空域のかなりの範囲で日本の航空機より米軍機の飛行が優先されるという独立国とは思えない状態が続いているということです。

 「横田空域」というのは、南は三浦半島全域と伊豆半島の北半分辺りから新潟県に至るまでの首都圏の大半の空域を占めており、都心においてもヘリコプターがかなりの低空飛行をしたり、群馬県辺りではかなり頻繁に危険な飛行訓練を繰り返していて、地域住民が騒音の恐怖に晒されているということです。

 苦情を申し入れてもカタチばかりの“配慮”の意向が示されるものの、ほとんどその“配慮”に沿った行動をしないばかりでなく、実際に墜落事故などを起こしており、やりたい放題の米軍ですが、政府はそれについてアメリカ側に抗議をしないどころか、国民ではなく米軍側に立った答弁をするといった始末です。

 日本同様に第二次世界大戦の敗戦国で米軍が駐留しているドイツやイタリアでは、当たり前と言えば当たり前ですが、駐留国の方規制の下で活動しており、日本がなぜこんな国を売るような事態を容認しているのか理解に苦しみます。

 ホントに独立国としてのプライドもクソもあったもんじゃないです。