仕事選びのアートとサイエンス/山口周

 

仕事選びのアートとサイエンス (光文社新書)

仕事選びのアートとサイエンス (光文社新書)

 

 

 先日『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)』に唸らされた山口さんですが、その成功を受けてか、2012年出版の『天職は寝て待て』という本が、二匹目のドジョウ狙い的なタイトルに改題して再出版ということのようです。

 で、結論から言うとあまり“アート”直接関係無いのですが、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で取り上げられていたような“美意識”を前面には出さないものの考え方のベースとなっていることが伺えます。

 で、旧題にある通り、この本の主題は“転職”なんですが、冒頭で従来の“転職”本が、転職するにおいての動機や、どういう風に志望を固めていくのかと言う、実は一番大事な、“天職”を選び取るというプロセスをすっ飛ばして、技術論的なところに終始することに苦言を呈されていて、どうやれば自分がシアワセになれる仕事を選び取れるかということについて紹介されます。

 この本を読んでいると『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で山口さんがロジカル一辺倒でコトを進めて行くことの弊害を指摘されているのが、山口さん自身が広告会社からコンサルティングファームに転職し、徹底的にロジカルにモノを突き詰める経験があればこそ、その弊害を指摘できたんだな、ということが逆説的に理解できます。

 そういう意味で転職を決意するところから、転職先で成果を出し始めるまでの、ありがちなココロの動きに沿った、留意しておくべき事項が整理されていて、あまりガチガチの実用書的なニオイは少なく抒情的でありながらも、転職で悩んでいる人にとっては、不思議な満足感を得られるんじゃないかと思える本でした。