哲学と宗教全史/出口治明

 

哲学と宗教全史

哲学と宗教全史

 

 


 世界史関連の著作で数々の名作をモノにされている出口さんが哲学と宗教の歴史を語られます。

 無知がバレバレになりますが、ワタクシ的には哲学と宗教を並べることに、???って感じだったのですが、出口さんは冒頭で「人間が抱き続けてきた、2つの素朴な問い。「世界はどうしてできたのか、また世界は何でできているのか?」、「人間はどこからきてどこへ行くのか、何のために生きているのか?」この問いに対して答えてきたのが、宗教であり哲学であり、さらに哲学から派生した自然科学でした。」とおっしゃられています。

 内容について論評できるほど、中身を消化できていないところもあるのですが、読後の単純な感想として、世界史の大きなうねりみたいなモノを、今までのどんな世界史関連の本よりも理解できたような気がします。

 出口さんのこれまでの世界史関連の諸作や、経済などを手掛かりに世界史を紹介した本など、ほぼ知識ゼロに近かったワタクシの世界史の理解を促してくれましたが、何か理解しきれていない感覚がありましたが、この本でキモの部分が理解できたような気がします。

 出口さんはこれまでもたびたび東洋と西洋の地理的な隔たりを超えた同時代性みたいなものを紹介されていましたが、この本ではより鮮明に“知の爆発”の発生や、孔子プラトンの類似性の指摘など、人間の共通性を際立たせておられます。

 また誤解を受けやすいイスラム教についてかなりの紙幅を割いて、その合理性や先進性を指摘されており、特に宗教改革におけるイスラム世界からの影響は、個人的には新鮮なオドロキでした。

 本編の最後で出口さんは「人間が何千年という長い歴史の中で、よりよく生きるために、また死の恐怖から逃れるために、必死に考えてきたことの結晶が哲学の歴史でもあります。もしかすると、どこかに明日への扉を開く重大なヒントが隠されているのかも知れません。
 少なくとも僕はそう信じて、この本を書きました。」とおっしゃておられて、個人的には世界史だけではなく、これまでなかなかイメージが掴みにくかった哲学のアウトラインがちょっとだけ見えた気がしました。

 これまで数々の名作をモノにされてきた出口さんですが、この本でさらなる高みに登られたような気がします。

 今年の投稿は、これで最後になりますが、個人的に一番インパクトを受けた本で締めくくりたいと思います。

 今年も2014年以来続く、一日欠かさない投稿を続けることができて、6年目となります。

 早速明日から投稿を続けたいと思いますので、来年もよろしくお願いいたします!