日本の「中国人」社会/中島恵

 

日本の「中国人」社会 (日経プレミアシリーズ)

日本の「中国人」社会 (日経プレミアシリーズ)

 

 

 中国人個人とのディープな交流を通して、中国人の実像を紹介される著作で知られる中島さんが、今回は日本に住む中国人の実像を紹介されます。

 日本に住んでいる中国人と言えば、かつては不法就労だったり、ほぼアルバイト生活の留学生といったステレオタイプ的なイメージがありますが、1990年代以降はそういった人は激減していて、どちらかというと富裕層が日本に住む傾向が高いそうです。

 そんな中で、埼玉県川口市横浜市南区の団地に中国人が急増していて、しかも地縁の結びつきの強い人々が口コミで集まっていて、どちらかというと中国の地縁コミュニティがそのまま日本に持ち込まれたという側面もあるようで、そういう意味でその地域の人々との多少の葛藤もあるようです。

 さらにより富裕な層は、日本であまり評判のよくない中国人と同一視されたくないという意図もあって、却ってそういう中国人のコミュニティを避けて、湾岸とタワーマンションや白金台などの高級住宅街に住居を求める傾向が強いということです。

 そういう超富裕層は、安全な住環境や、子息を現代中国の苛烈な競争から話したいという意図もあって日本に住居を求めているようなのですが、その反面、現在の中国と比べてあまりにヌルい日本の教育環境と比較して、本土で教育を受けている同世代の子供たちに取り残されるんじゃないかという焦りを覚えるという側面もあるようで、日本に中国系の教育機関が少ないこともあって、子供の競争力を維持するために本国に戻った方がいいのではないかと思い悩む層もあるということです。

 この一事を見ても、日本が中国との差をグングン広げられていることがよくわかります。