世界史の大逆転/佐藤優、宮家邦彦

 

世界史の大逆転 国際情勢のルールが変わった (角川新書)

世界史の大逆転 国際情勢のルールが変わった (角川新書)

 

 

 「知の怪人」佐藤さんの対談本なんですが、今回のお相手は同時期に外務省を去ったという外交関連のシンクタンクを主宰されている方です。
 
 外務省では同僚だったということになるのですが、佐藤さんが一貫してロシアスクールだったのに対して、宮家さんはアメリカ、中東、中国に関わってこられたということで、外務省時代はほとんど接点がなかったそうです。

 佐藤さんの対談本では、概ね佐藤さんの圧倒的な博識に対談相手が押されてしまうことが多々あるのですが、この本ではそれぞれの専門分野に重なりが少ないこともあり、丁々発止のやり取りが楽しめます。

 タイトルが「世界史の大逆転」とありますが、ここ数年でこれまでの外交の“セオリー”みたいなものが通用しにくくなってきていると言うのがお二方の共通した認識で、その大きな転換点がやはりトランプ大統領の就任だったということで、それまで精緻な戦略の下に遂行されてきたアメリカの外交が、極端な言い方をすればトランプ大統領の“思い付き”で行われてしまうといった側面があり、その影響がどっちに行くのかが予測しにくくなっており、不確実性が著しく高くなっているようです。

 さらにはAIが世界情勢に及ぼす影響についても触れられているのですが、語句に軍事面でのAIの適用についての研究が各国でも進んでいるようで、AIが暴走した時に抑止力はどうなるのかといった、かなりアブナイ課題もあるようです。

 ポピュリズムが世界情勢の不確実性をもたらしているというのが、かなり危ういと思えるところで、また戦争が頻発するような世界になってしまわないか不安なところです。