宮崎アニメの暗号/青井汎

 

宮崎アニメの暗号 (新潮新書)

宮崎アニメの暗号 (新潮新書)

  • 作者:青井 汎
  • 発売日: 2004/08/01
  • メディア: 新書
 

  宮崎アニメというと、子供から高齢者まで、さらには世界中の人々から愛され、それぞれの楽しみ方ができるということで高く評価されていますが、その秘訣を探ったとも思える、宮崎アニメに内在する「仕掛け」に迫った内容の本です。

 

 コドモはフツーにストーリーをナゾッて楽しんでいるでしょうし、オトナは多くの宮崎アニメに現れるスピリチュアルなモノに魅了されるところがあると思うのですが、かなり強い意図をもって、そういう世界観を描いているようです。

 

 一番驚いたのが『となりのトトロ』は、下敷きとなっている『ミツバチのささやき』というスペイン映画があるということで、キャラクター設定などは酷似しているのですが、それを昭和30年代の日本の田舎を舞台にしたことで、より自然との結びつきを鮮明にしているようです。

 

 『となりのトトロ』だけでなく、『ナウシカ』では“ケルトの森”だったり中国思想の要素が取り入れられていたりとか、この本では集大成ととらえられている『もののけ姫』では宮沢賢治の世界観を下敷きにしているということで、宮崎アニメの多くは、古代中国の自然哲学である「五行思想」に大きな影響を受けていると指摘されています。

 

 ということで、哲学的な描写も多く難解な部分も少なからずありますが、なぜ世界中の幅広い人々から深く愛されるかということの由来の一端を垣間見せてくれる本だと思います。