決戦前夜/金子達仁

 

決戦前夜―Road to FRANCE

決戦前夜―Road to FRANCE

 

  昨日に引き続き金子さんのサッカー本です。

 

 この本は、フランスW杯のアジア最終予選を中田選手と川口選手からの視点をメインに描いた本なのですが、最終予選自体が土俵際ギリギリまで追い詰められながらも最後の最後に大逆転で出場権を獲得した”ジョホールバルの歓喜”というドラマチックな幕切れとなった、デキすぎたストーリーのため、誰が書いてもそこそこのモノが書けるする向きもあり、知られざるチームの内部崩壊を描いた『28年目のハーフタイム』と比べると一部に否定的な見方もあるようですが、セールス的にも金子さんの代表作であり、そのドラマチックな展開を損なうことなく展開されているのは見事で、久々の再読ですが、W杯出場を決めた岡野選手のゴールデンゴールのシーンを読んでいると、未だにこみあげてくるものがあります。

 

 デキすぎたストーリーがベースにはなっているものの、『28年目のハーフタイム』での内部崩壊の描写にもあったような、”ドーハの悲劇”組と”マイアミの奇跡”組の軋轢や、異例の予選途中での加茂監督の解任の内幕などの葛藤も紹介されており、”デキすぎたストーリー”をさらに”盛って”いる要素もあり、今読み返してみると、やはりこれは当時の金子さんにしか書けないスリリングなモノだと再認識させられます。

 

 それにしても、ここで日本代表がW杯に出場できていなかったとしたら、きっと今日にような成果を上げられていなかっただろうなと思うと、よくぞ踏みとどまってくれたもんだと思わずにはいられません。