ヴェテラン/海老沢泰久

 

ヴェテラン

ヴェテラン

 

 

 ここのところ『Number』にまつわる本を紹介し続けておりますが、『Number』の初期を支えた執筆陣のおひとりとして海老沢泰久さんがいらっしゃいます。

 

 海老沢さんは元々ノンフィクションを中心に小説なども手がけられていた作家さんだったのですが、初期の『Number』にも度々寄稿されており、スポーツライターとして認識されている方も多いかと思いますし、特にF1関連の著書で知られ『F1地上の夢』は名作として知られています。

 

 2009年に惜しまれながらも亡くなられるまで様々なジャンルでの著作をされていた海老沢さんですが、この本は『Number』に連載されいたと思われるプロ野球の”ヴェテラン”選手たちの葛藤を追った本で、当時の『Number』の作風に沿った、サイドストーリーに重きを置いたモノとなっています。

 

 元巨人の西本聖投手や、元広島の高橋慶彦といったトップレベルで活躍した選手が”ヴェテラン”と言われる年代になり、多少力の衰えも意識しつつも、ストイックに競技に取組みながら、それがゆえにチームにとっては多少ウルサイ存在となってしまい、チームでの居場所を無くしていき、トレードでチームを去るといった悲哀を追われています。

 

 当時のプロ野球のトレードというと、どうも懲罰的な色合いが濃かったようで、必ずしも戦力的な観点でなされたものばかりではないということと、実力の世界であるはずのプロ野球でもドロドロした”人事”があったんだなぁということを、当時この本を読んで感じさせられたものです。