監督/海老沢泰久

 

監督 (文春文庫)

監督 (文春文庫)

 

 

 この本は『Number』とは関係ないのですが、昨日海老沢泰久さんの著書を紹介して、海老沢さんの著書と言えば、個人的にこれを紹介しないワケには行かないでしょ!?ということで再読してみました。

 

 この本は1978年に、当時"お荷物球団"とされていて優勝経験のなかったヤクルトスワローズを”奇跡”の初優勝に導いた広岡達朗監督のチームを下敷きにして書かれた「フィクション」ということで、主役である「広岡達朗」という”架空”の人物が監督を務める「エンゼルス」という”お荷物球団”が初優勝を遂げる直前までを描いたストーリーとなっています。

 

 しかも架空の「広岡達朗」監督が率いる「エンゼルス」のメンバーは1978年当時のスワローズの主力選手である若松選手や大杉選手、大矢選手、松岡投手や安田投手を思わせるキャラで固められ、一部当時のスワローズには存在しなかった外国人エース投手と言う現実とは異なる設定はありますが、そういったメンバーが王選手や堀内投手がいる「巨人」や江本投手がいる「阪神」とペナントを戦うという、現実とフィクションが行き来するパラレルワールドを作り上げられています。

 

 その上、主力の故障やコーチ陣の造反や、実際にはなかったでしょうけど、八百長疑惑や広岡監督の引き抜き工作になど、ジェットコースターに乗っているかのような疾走感とアップダウンで、350ページ以上の著者をイッキに読ませてくれます。

 

 今となっては中古本か、図書館でしか目にすることはないと思いますが、図書館が再開した暁には、野球ファンには是非とも手に取っていただきたい快作です!