日本人の遊び場/開高健

 

 

 先日紹介した『ずばり東京』に引き続き開高さんのルポなんですが、先日は東京オリンピック前後の東京の風俗を紹介したモノだったんですが、この本はその少し前の昭和30年代半ばの日本人の娯楽を紹介した内容の本です。

 

 『ずばり東京』の時も同様の印象を受けたのですが、この本は現在から60年以上経っている時期のことを扱った内容となっているのですが、驚くほど現在との違いが少ないと感じます。

 

 ヘルスセンターとか、大阪道頓堀にあった”くいだおれ”に代表される大箱の飲食店など、既に一般的ではなくなった業態が含まれていることはモチロンなのですが、パチンコだったり、釣り堀だったり、ボウリングだったりと今なお(比較的高めの年齢層の人向けではあるものの…)人気のある娯楽なのはオドロキです。(まあ、多少位置づけは違うようには思えるんですけどね!?(笑))

 

 おまけにそういった娯楽施設での一般的な日本人の楽しみ方が、どこか普段の仕事とか学業とかが抜けきれなくて抱えたまま、多少その場の娯楽を楽しみつつも、半分は普段の生活に拘泥しているように思えるところまで、60年後の日本人もまるで進化していないんだなぁ、と思えます。

 

 この本で扱っている娯楽を楽しんでいる人たちも、どちらかというと高めの年齢層の人向けのモノが多いのでそう思うのかも知れませんが、もうちょっと日本人の娯楽も進化しないとなぁ、と思いつつも、それだけ日本人の精神の深奥に根ざした娯楽が提供されていることを感謝すべきなのか、とも思わなくもありません。