官僚の責任/古賀茂明

 

官僚の責任 (PHP新書)

官僚の責任 (PHP新書)

 

 

 2011~2015年にテレビ朝日報道ステーション』のコンテンテーターを務められて、あまりの過激な論説に安倍官邸からの圧力がかかり、忖度したテレ朝首脳陣に降板させられ、その経緯を生放送でブチまけたことで知られる元通産官僚である古賀さんが語る”官僚論”です。

 

 この本は古賀さんが官僚を辞められた直後で、報道ステーションのコメンテーターになられる前に書かれたモノのようですが、官僚時代から報道ステーションでの暴れっぷりが想像できるような跳ねっ帰りぷりだったようで、有能でありながら保守的な上司に白眼視されていたようです。

 

 当時、東日本大震災直後で、菅首相の人災とも言える官邸の機能不全が顕著だった時期だったようですが、それに負けず劣らず霞が関も機能不全だったようで、かくも重大な国難の時期にありながら、復興対策においても縄張り意識バリバリで、とても”国民の奉仕者”たる公務員の片りんも見えなかったということです。

 

 戦後の高度成長期までは、如何にして復興を図るかと言う国家の総意の実現に向けて、「世界最強のシンクタンク」とも言われた日本の官僚組織ですが、そういう危機を脱した後は、本来、えり抜きだったはずの才能を組織の自己保全のためだけに発揮し、まるで国民のことを見ていない状況になってしまったということです。

 

 そういった中で公務員改革の取組があって、古賀さんもその主要メンバーだったようで、本来なら官僚とのシガラミの少ない民主党政権だったこともあって、絶好のタイミングだったはずなのですが、官僚たちの決死の反発にあって、差し障りのないモノになってしまったようです。

 

 その結果として生まれた、幹部職員の人事権を官邸が掌握するという制度が、安倍政権に悪用され、官邸への忖度まみれの、より腐敗した状況になったのはご存知の通りです。

 

 結果、コロナ禍という国難に、ロクに対応できない、政治・官僚ができあがってしまい、今後どうなってしまうのか、恐ろしくて恐ろしくて…