ものづくり成長戦略/藤本隆宏、柴田孝

 

 

 ひと頃は製造業の生産拠点が低コストを求めて、こぞって海外に出て行ってしまい、産業構造の空洞化が問題となりましたが、海外生産拠点コストメリットの低下や国際情勢がもたらす調達リスク、日本の高度なものづくり能力の見直しなどにより、徐々に生産拠点の国内回帰が進んでいると言われています。

 

 とはいうモノの、製造業のかなりの割合を占める企業が中小企業であり、生産性向上に資するノウハウの取得は困難を極め、中小企業の収益性の向上は国家的な課題とも言えます。

 

 同時に、"人生100年時代"と言われる高齢化社会の進展にあって、年金財政も逼迫する中、如何に経験のある人たちに活躍してもらえるかというのも大きな課題です。

 

 そういった問題を一気に解決するために、製造業で長年のノウハウを持つ人々を、自治体だったり、業界の組織などで一定の組織を作り、その中でインストラクターとして活躍してもらうことで、高齢者の活用や生産に関する有用なノウハウの移転といった"一石二鳥”を求める動きがあるようです。

 

 しかもこれは"一石二鳥”どころではなく、中小企業の融資元である地銀なども巻き込むことによって、融資元である地銀がインストラクターを通じた生産性の向上を促すことで、融資をスムーズに進めることにもつながるということで、そういった動きが地域全体で進むことによって、地域の活性化につながるということです。

 

 そういう動きを加速するためには大学などでのノウハウ移転のサポートも重要であり、そういうネットワークが大企業ともつながると、より大きなノウハウ移転の活性化につながるということで、かなり期待できるムーブメントだと言えそうです。