奇跡の村/相川俊英

 

奇跡の村 地方は「人」で再生する (集英社新書)

奇跡の村 地方は「人」で再生する (集英社新書)

  • 作者:相川 俊英
  • 発売日: 2015/10/16
  • メディア: 新書
 

 

 地方における様々な取組を中心に取材をされているジャーナリストの方が、「消滅可能性自治体」とも言える存亡の危機にあった自治体などで、奇跡のV字回復を成し遂げたエピソードを紹介された本です。

 

 サブタイトルが『地方は「人」で再生する』とあるように、この本で紹介される3つの自治体-長野県下條村群馬県南牧村、神奈川県・旧藤野村(現相模原市)では、それぞれ首長だったり、議員だったり、自治体職員だったりといった地域にかかわる人たちの中に、特に意欲が高く、地方にありがちな旧弊を重んじる人たちの既得権益を背負った反発にもめげず、先例を圧迫的に押し付けてくる中央官庁の圧力にも打ち勝ちながら、それぞれの地域のあるべきと信じた姿を見失わず、実現に向けて邁進した姿が描かれています。

 

 実際にやられていることと言えば、外部からの定住誘致だったり、訪問者の増加に向けた施策だったり、地域振興に向けた対応だったりと、割と”ありがち”なモノなので、施策そのものにあまり面白味はないと言えばないのですが、それぞれの地域での施策に取組んでおられる「人」の姿勢そのものがかなり興味をそそるモノとなっています。

 

 やはりそういう中でも、稀有な行動力が求められるとともに、その地域を良くしようという純粋な熱意に周囲の人がほだされると言った側面もあり、そういった”無私”な部分も不可欠なようです。

 

 でも逆に言うと、そういう意欲も能力もあって、無私で人をひきつけてやまないといった稀有な人がその地域にいて、紆余曲折があったとしても守旧派の反発にめげずに信じた施策を貫き通すとなると、かなり「奇跡」的な確率となってしまい、多くの地域にとっては望むべくもないと、ある意味絶望的な気にもなります。