ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治

 

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)
 

 

 随分以前に、読書家で知られるメイプル超合金カズレーザーさんがテレビで絶賛されているのを見て、読んでみようかと思ったら同じことを考えていた人が山ほどいたようで、しかもコロナ禍の図書館閉鎖なんかも重なって、ようやく手に取ることができました。

 

 この本を書かれたのが、元々精神科の外来を診られている時に少年の発達障害などの治療に携わられて、根本的な治療法を求めて医療少年院に転身されて、この本で扱われているような少年たちの治療に携わられたようです。

 

 非行少年の多くは発達障害や軽度の知的障害を抱えていることが多いのですが、実際にそのことが分かるのが何らかの犯罪を犯して少年院に収監された時が多いということで、しかも医療少年院であっても型通りの矯正プログラムでは、認知機能が正常であることを前提にしていることが多いということで、非行の遠因となる障害を是正することは難しいようです。

 

 特に医療少年院に送致されるような非行少年たちは認知機能に問題のある場合が多いということで、読み書きに問題があったり、さっき言ったことをすぐに忘れてしまうとかということがあるようですし、人を殺しておきながら「僕はやさしい」とマジメに言うこともあるようです。

 

 そういった少年たちに向けて治療をされるにあたって、ごくカンタンなトレーニングを粘り強く重ねていくことによって成功体験を持つことができ、それが元で自信が付いてくることにより、次第に認知機能を取り戻すことができているケースが少なからずあるようです。

 

 宮口さんは、そういったトレーニングを非行に至らない時点で取り入れることを勧められており、軽度の知的障害の傾向がみられる生徒たちに認知機能のトレーニングを導入することの意義を強調されています。

 

 正直、非行少年と言うのはある意味”悪意”とセットだと思っていたので、認知の歪みが非行を生んでいたというのはかなりのオドロキであり、元々生徒たちに発達障害とかなんとかってレッテルを貼ることを否定的に考えていましたが、早めにそういう対策をするためには必要なことだったんだ、と認識を改めた次第でした。