インテリジェンス人間論/佐藤優

 

インテリジェンス人間論(新潮文庫)

インテリジェンス人間論(新潮文庫)

 

 

 昨日に引き続き「知の怪人」佐藤優さんの比較的初期の著書で、インテリジェンス活動に携わってきた方々、歴史上の著名人のインテリジェンス的な側面について紹介された本です。

 

 冒頭で”盟友”鈴木宗男さんについて触れられているのですが、いわゆるムネオ事件で拘束されるまではあくまでも仕事上でのつながりだったということなのですが、拘留されて以降”同志”としてのつながりが育まれたとおっしゃっています。

 

 この時点までで最も難産な原稿だったとおっしゃっていますが、それぞれ鈴木さんは鈴木さんで一官僚である佐藤さんを政争に巻き込んでしまったという呵責があり、佐藤さんンは佐藤さんで外務省の悲願である北方領土返還に向けたドロドロの争いの中に巻き込んでしまったという呵責があるようで、それぞれがそれぞれに対して義理を果たそうとした過程を紹介されています。

 

 逮捕前後は、外務省を私物化したような報道をされたお二方ですが、かなりやり過ぎた側面はあるモノの、硬軟織り交ぜたインテリジェンス活動は目をみはるばかりで、ここでお二方が有罪となってしまったことで、大きく日本のインテリジェンス活動が委縮してしまったことが想像できます。

 

 その他にも数多くの人物が紹介されているのですが、個人的に興味深かったのが、志半ばで病に倒れた小渕首相で、かなり本気で北方領土返還に取り組む姿勢を見せていたようで、世間のイメージとは異なり、かなりハードボイルドかつ、切れ者だった側面があったことを紹介されています。

 

 また知られざるインテリジェンス・オフィサーとして、占領下における有末精三氏のGHQに対するインテリジェンス活動が紹介されているのですが、ドイツやイタリアなど他の敗戦国が軍政下におかれることになったのに対し、日本が比較的緩やかな監視下に置かれたのは、有末氏のインテリジェンス活動によるところが大きいと指摘されています。

 

 さらにイエス・キリストのインテリジェンス・オフィサー的な側面を指摘されていたりと、インテリジェンス活動がいかなるものかというイメージを掴むのに格好的な入門書と言えるかも知れません。