絶対に挫折しない日本史/古市憲寿

 

絶対に挫折しない日本史(新潮新書)

絶対に挫折しない日本史(新潮新書)

 

 

 新進気鋭の社会学者として世に出ながら、一時期は単なる炎上キャラとされる向きもありましたが、最近は安定的にテレビのコメンテーターを務められたり、小説まで手掛けられて、文化人としての地歩を固めつつある古市さんですが、日本史の本を書かれたということに興味を惹かれて手に取ってみました。

 

 実際に「挫折しない」かどうかは別として、日本史の”学習”がやたらと固有名詞や年号の”記憶”を求められて、何の役に立つのかよくわからないという意見は、歴史ずっきなワタクシにも理解できるところですし、「知の怪人」佐藤優さんや出口さんなど歴史学を専門としない方々が、歴史のダイナミズムに着目した著書を出版されることが続いていて、そういう部分にオモシロさを感じる人たちの徐々に出てきてはいるようです。

 

 ただお二方の著書にしても、それなりに固有名詞は出てくるので、やはり難しさを感じる向きもあるんでしょうし、そこまで割り切ったモノを書けるとすれば古市さんなのかな、という気はしました。

 

 ということで、バッサリ枝葉末節を切り落として、大きな流れだけを捉えることだけに注力したということで、入試とかそういうモノにどこまで役に立つのかというギモンはあるかと思いますが、ある意味究極のダイナミズムを感じることはでき、それが歴史への理解のキッカケとなる可能性はあるのかな、とは思います。

 

 特に、古代~中世~近世へと至る流れについて、古代では背伸びをして中央集権国家を作ろうとしたけど挫折して、バラバラになったのが中世で、それがもう一度国家としての効率を求める上で統一されたのが近世というのは世界史的な時代区分とも合致しますし、ごくごくザックリした捉え方としては、院政が中世の始まりとは言うよりはわかりやすいんじゃないかと思います。

 

 また国家の役割として、例え冷血の独裁者に支配されるのであっても、無政府状態であるよりは国民の生活を守ることに資するということは、世界中で段々と集権国家が普及して行くに従い、戦争が減少し、死者が減って行った過程と重なるという見方はできると思います。

 

 ということで、超俯瞰的な見方にはなってしまうのですが、人類というか日本人全体の進化史といった意味合いでの捉え方はアリだと思いますし、ある意味目からウロコな1冊だと思います…まあ、否定したい人たちは山ほどいるとは思いますが…