0から学ぶ「日本史」講義 戦国・江戸篇/出口治明

 

0から学ぶ「日本史」講義 戦国・江戸篇

0から学ぶ「日本史」講義 戦国・江戸篇

 

 

 出口さんの日本史本も『古代篇』『中世篇』に続く第三弾で、近世を扱うのですが、タイトルは『戦国・江戸篇』なんだそうです。

 

 冒頭で、日本の中世が1068年の院政の開始に始まり、中世と近世の境目である、織田信長室町幕府15代将軍となる足利義明を奉じて上洛したのが1568年、そして近代の始まりである明治維新が1868年と、それぞれの分かれ目の年の下2桁が「68」だという小ネタを紹介されています。(笑)

 

 やはり『近世篇』においても、世界史とのリンケージを意識して展開されるワケですが、中世から近世に進むにあたって日本史に大きな影響を与えた世界史上の出来事として、

 

 1.ヨーロッパにおける印刷術の普及と宗教改革

 2.コロン(コロンブス)による新大陸への到達とインド洋における海上権力の空白

 3.石見・ポトシ銀山の開発

 

の3つを挙げられていますが、余程大枠で世界史と日本史を捉えていなければ、なんのこっちゃ!?って感じだと思いますが、これについて実際に手に取ってみて確かめてみてください。(笑)

 

 ただ、石見銀山というのは、現在世界文化遺産に指定されていますが、おそらく日本が世界に与えたインパクトの最大のモノのうちの一つだとされているということで、そのおカネの流れが近世の扉を開いたともいえるようです。

 

 その後、日本が鎖国(出口さんは”鎖国”は「無かったとは言えない」との立場を取られているようですが…)できたのも、当時は銀山や銅山を掘りつくして、ほとんど売るモノがなかったから、諸外国も寄ってこなかっただけの話ともおっしゃっておられるのと、鎖国自体はキリシタン対策と言うよりも、諸大名が個々に貿易をすることで力をつけるのをを防ぐという側面が大きかったことは興味深い指摘だと思います。

 

 また、江戸期の諸改革ですが、享保・寛政・天保の諸改革は、あくまでも朱子学の観点から称賛されているだけのモノで、寧ろ市場経済を停滞させる側面が大きかったようで、そういう意味では、賄賂の悪名高い田沼意次市場経済を根付かせた功労者ともいえるようです。

 

 さらに江戸期は戦もなくなって平穏な時代だったという評価に対し、4度もの飢饉により、そのたびに現在の横浜市の人口程度の死者が出て、戦国時代よりずっと死者数が多かったことを指摘されているのは、ファクトをプレーンに評価しようとする出口さんの面目躍如と言えるのではないでしょうか!?

 

 いよいよ、近代編が楽しみですね!