家族のトリセツ/黒川伊保子

 

家族のトリセツ (NHK出版新書)

家族のトリセツ (NHK出版新書)

 

 

 『妻のトリセツ』の大ヒットに続き、『夫のトリセツ』を経て、『娘のトリセツ』や『息子のトリセツ (扶桑社新書)』までも出版され、とうとう『家族のトリセツ』ということになってしまいました。(笑)

 

 ウチには息子はいないので『息子のトリセツ』は未読なのですが、『妻のトリセツ』や『夫のトリセツ』が如何にしてヨメやダンナを扱うか、というテクニック的な部分が前面にあった気がするのですが、『娘のトリセツ』あたりから趣が変わって来ていて、元々他人だった妻・夫という関係に対して、無条件に愛することができるムスメという存在に対しては、テクニック的なモノよりも、愛情としつけ的なモノとの葛藤みたいなモノに主要なテーマが移ってきているように思えて、この『家族のトリセツ』はどちらかというと、そういう側面が強いモノとなっています。

 

 ダンナやヨメが相手であるにせよ、ムスメが相手であるのせよ、元々愛すべき存在であったはずなのが、日々ともに生活をしていると、気に入らないところばかりが目について来て、ついつい小言が先行してしまいがちですが、そういう”欠点”というのは、元々その人を愛することになった美質と表裏一体のモノであり、小言でその”欠点”を矯正するということは、その人を愛することになった”美質”を何らかのカタチで損なうことになりかねないということです。

 

 だからこそ、そういう”欠点”ばかりに目を向けるのではなくて、”美質”とセットでみることで、ある程度大目に見ることができるし、よりその人らしく

 

 また、日本人はついつい欠点を矯正することに目が行きがちですが、そういうアプローチを取ってしまうと、”失敗”を恐れるメンタリティーになりがちであり、伸び伸びと個性をはぐくむと言うワケには行かなくなってしまうということで、学校教育にありがちな”型にハマった”人ができてしまいがちです。

 

 だからこそ相手を信頼して「甘やか」して、そのままを受け入れることでシアワセな家族関係を築くことをススメられているのですが、そうやって甘やかすとダメになってしまうんじゃないかというありがちな批判について、心底から信頼された人間は往々にしてそれに応えようとするものであって、そうそう道を外れるものではないとおっしゃいます。

 

 確かに我々は細かい欠点を見てしまいがちですが、そういう大きな”愛”で包み込むことがシアワセにつながるんだということは、結構”目からウロコ”で、個人的にはこのシリーズで一番得るものが多い本だったんじゃないかと感じました。