人口減少社会の未来学/内田樹編

 

人口減少社会の未来学

人口減少社会の未来学

  • 発売日: 2018/04/27
  • メディア: 単行本
 

 

 『日本辺境論』など日本を取り巻く問題での著作でも知られる内田樹さんが文芸春秋に執筆者の選定も含めて依頼されてまとめられた人口減少に関する本です。

 

 『デフレの正体』や『里山資本主義』で知られる藻谷浩介さんや、昨年立て続けにこのブログでも著作を紹介した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のブレイディみかこさん、新国立競技場を設計された隈研吾さんなど、かなり豪華な顔ぶれがそれぞれのご専門を踏まえて人口減少の問題について語られています。

 

 冒頭で編者でもある内田さんが、この本を編まれた趣旨も踏まえて人口減少について語られていますが、河合雅司さんが『未来の年表』を始めとする諸作で、日本における人口減少と、その結果として予測できる危機的な状況が、かなり正確に発生が予測できる自称であったにも関わらず、長らく少子化対策など具体的な対応をせずに放置してきたことによって生じる”人災”的な側面が強いという趣旨の事をおっしゃっていられるのですが、戦略的にモノを考えて、それを一つ一つキッチリとこなしていくというセオリーをこなせないという日本人の致命的な欠点に言及されています。

 

 そんな中で、どうしたらこの人口減少を防ぐことができるのか、また人口減少を前提としてどういった社会を作っていくのかという、様々なアプローチが紹介されていますが、どれもかなりグラウンド・デザイン~具体的な施策・実行への落とし込みという、内田さんがおっしゃられる日本人のアキレス腱的な能力を求められることが多く、未だ有効な施策がとられていないことが、ある意味腑に落ちます。

 

 その他、出生率を回復した欧米諸国に対して、日本と韓国だけ婚外子の少なさが出生率の工場の妨げになっているなど、かなり特殊で構造的な要因が多いようで、ホントにどうしようもないのかな!?と暗澹たるキモチになってしまいます…