右傾社会ニッポン/中野雅至

 

右傾社会ニッポン (ディスカヴァー携書)

右傾社会ニッポン (ディスカヴァー携書)

  • 作者:中野雅至
  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: 新書
 

 

 地方公務員から労働省勤務を経て、大学で教鞭を取られながら文筆活動をされているという異色の経歴をお持ちの方が「右傾」化の現状を語られます。

 

 よく日本では”右翼””左翼”の定義が混乱していて、”右翼”というと”天皇バンザイ”で、”左翼”は"アカ"だというイメージになりがちですが、この本では、

  右翼:自分の国(歴史・伝統など)を何よりも重要だと考える人

  左翼:社会をより良いものにするために変革しようと考える人

だと冒頭で定義されています。

 

 この本が出版されたのが、安倍氏が首相に再任されて2年位経った頃で、右傾化が顕著になりつつあった時期だということで、その時期の背景や原因などを含めて「右傾」化の状況を紹介されています。

 

 そもそもマスコミや大衆はいつも何らかの”叩く”ターゲットを探しているモノなのですが、日本が経済的に好調の時期にはそれほど不満が溜まらないこともあり、叩いてもあまり差し支えのない官僚だったり大企業だったりが対象となりがちだったいうです。

 

 しかし、”失われた十年”(二十年?)と言われる不況を経て、日本の経済的な地位が相対的に低下し、社会的な余裕もなくなっていき、大戦中に大迷惑をかけたため、それまでは禁断とされていた中国や韓国への攻撃が公然となされるようになったということで、しかも韓国政府が反日を政治利用するようなことを、日本の政府も自らへの批判をかわすために利用するようになり、「右傾」化が顕著となってしまっているようです。

 

 必ずしもこういう「排外主義」的な行動が「右傾」に直結するワケではないということなのですが、中国や韓国を貶めて、自国が素晴らしいとするということで「右傾」化の一現象として捉えられるようなのですが、何ともサモシいハナシで、哀しくなってきます。

 

 何とかもうちょっと別のカタチで誇りを持てる社会になることが望まれますが、なかなか見通しは明るくないようです…