天邪鬼のすすめ/下重暁子

 

天邪鬼のすすめ (文春新書)

天邪鬼のすすめ (文春新書)

 

 

 2015年に出版された『家族という病』が話題をまいた元NHKアナウンサーで、最近は文筆活動をされている下重さんの自伝的な著書です。

 

 『家族という病』でも、ご自身の家族との軋轢を紹介されて、そこから自由になって自我を確立することの意義と効用を強調されていましたが、この本ではご自身の生い立ちから軋轢が生じるようになった経緯を紹介されており、軋轢が生じた原因なんかがよくわかります。

 

 確かに、当時の女性としてはかなり自律的なキャリアを形成してこられたでしょうし、結果として現在は望まれていた文筆活動をされているということで、かなりの精度で自己実現をされたということで、「天邪鬼」とおっしゃるライフスタイルに自信を持ってられるからこそこういう本を書かれるのだとは思いますが、随分と女性の自立が進んだ現代においても、なかなかマネのできないライフスタイルなんじゃないかと感じさせられます。

 

 というのも、自分に依存する母親に対して、自立をするようになじったり、元軍人としておそらくトラウマに捉われていた父親に滅びの美学に殉じるべきだったと責めたりと、なかなか苛烈な態度で接していたことなどもあって家族との軋轢を引き起こしたという苛烈さもあったようで、なかなか多くの人にとってそこまでしての自己実現…という躊躇が働いてしまうのではないかと感じます。

 

 まあ、現代ではそこまでの覚悟は必要ないのかも知れませんが、自己実現というのはそこまで切迫したモノであるのかも知れません。