仕事と心の流儀/丹羽宇一郎

 

仕事と心の流儀 (講談社現代新書)

仕事と心の流儀 (講談社現代新書)

 

 

 伊藤忠商事の元社長で、読書家としても知られ『死ぬほど読書』を執筆したことでも知られる丹羽さんが語る”仕事論”です。

 

 モチロン、良く知られた名経営者であり、こういう仕事論的な本の執筆が求められるのはナットクなんですが、この本なかなかに”The 昭和”的なモノであり、”仕事論”的な自己啓発書を求める若い年代層の人たちにありがちな、合理的な仕事術みたいなモノを求める向きには、最初の10年はひたすら言われたとおりに仕事に没頭すべきとか、ノミニケーション礼賛みたいな記述には辟易してしまうんじゃないかということで、取扱注意です。

 

 ただ、やれることはやり切ったと思うまで準備をすることで迷いがなくなるといったことや、どれだけ都合が悪いことがあっても正直に開示することで余計な神経を使わなくてもよくなるといった、”The 昭和”なんだけど、合理主義的な人も忘れないようにしておいた方がいいんじゃないかと思うこともあって、そういう人たちにも見ておいて欲しいな、と思うところもあります。

 

 あとはやはり経営者として名を馳せただけあって、部下との接し方については唸らされるところが多く、部下のプライベートの部分まである程度は抑えておくべきという部分には辟易する向きもあるかも知れませんが、何度跳ね返しても食いついてくる部下に対しては思い切って任せてしまうことも経営者として部下育成のための重要な局面なんだということは、無難に過ごそうとする”上司”にとっては傾聴すべきなんだと思います。

 

 なんでもかんでもスマートにというワケではなく、こういう泥臭いスタイルも未だ、有効な部分があるんじゃないかという視点で、敢えて若い人たちにも手に取ってもらいたいところです。