亡命者の古書店 続・私のイギリス物語/佐藤優

 

 

 昨日紹介した『紳士協定 私のイギリス物語』の続編になります。

 

 正編ではホームステイ先の息子さんとの交流を中心に描かれていましたが、続編ではチェコから亡命して古書店を営む方との交流が中心となっています。

 

 元々佐藤さんは大学時代にチェコ神学者フロマートカの研究に没頭し、外務省に入省したのもあわよくばチェコに留学するチャンスがあるかも知れないと思われたからだということを再三著書で告白されていますが、イギリス留学時はフロマートカを始めとするチェコ神学に関する書籍を探求されていたようで、その過程で出合われた古書店主にチェコ神学についての教えを乞うことになったようです。

 

 その古書店主は、共産革命前に祖国からイギリスに留学している最中に革命が起こり、祖国には戻るに戻れなくなりイギリスに亡命されたということです。

 

 その他、語学留学中の同僚など、英国社会では”マージナル”…主流ではなく周辺に属する人との交流が多かったようですが、あとがきで佐藤さんご自身が沖縄系ということで、自身も日本では”マージナル”な存在であることから、そういう人たちにシンパシーが向くんだということをおっしゃられています。

 

 そういう”マージナル”な人々の生きにくさについても言及されてはいるのですが、それでも生きて行くたくましさみたいなモノも併せて強調されているような気がします。

 

 前作の息子さん同様、古書店主ともかなり深い交流をされた様子を紹介されているのですが、ご自身では人見知りを自称されてはいるのですが、多くの人とこういう深い関係を築けるのはかなりの才能のような気がしますし、そういう性向が佐藤さんに取って、その後災いにもなり、助けにもなっているようですが、大きな財産であることは間違いなさそうです。