丁寧に考える新型コロナ/岩田健太郎

 

丁寧に考える新型コロナ (光文社新書)

丁寧に考える新型コロナ (光文社新書)

 

 

 日本でのコロナ禍の発端とも言えるクルーズ船での感染拡大時に、感染対策の専門家として呼び寄せられたものの、あまりに正当で厚労省の官僚に取って“イタい”指摘を連発したがためにクルーズ船を叩きだされ、その惨状をYouTubeで暴露したことで一気に名を馳せ、その後もSNSでコロナ禍に関する”正論”を発し続ける岩田センセイがコロナ禍の様々な側面について語られた本です。

 

 どうもコロナ禍では、あまりに社会的な影響が大きくなったこともあって、感染症の門外漢が、専門家からすると首をかしげるしかない意見をイケしゃーしゃーと発していることが多いようで、そういうモノに対してSNSで修正発言をした岩田センセイが却ってディスられるということも多いようです。

 

 ということで、そういう誤解を解き解すという意味が多いようですが、PCR検査をやたら増やすことの有害性や、マスク万能論へのギモン、その他感染防止に関する姿勢など、これまで誤解していたことも多く、非常に分かり易い内容となっています。

 

 こういうそもそも論でちゃんとCOVID-19がどういうモノなのか、どういう対策をすればキチンとした感染抑制につながるのかということを認識したうえで、最低限で効果的な対応をすることが重要であるにも関わらず、似非専門家のしたり顔の忠告に歪められているところが多かったんだなぁ、と痛感させられます。

 

 最後では「8割おじさん」こと西浦博先生との対談があって、専門家として政府と関わるにあたっての苦労話を切々と語られており、今回のコロナ禍において政府の対応が相当専門家集団の足を引っ張っていたことを明かされており、対応の遅れや、政治的な捻じ曲げなど、今回のコロナ禍の少なからぬ部分が政府によって生み出された”人災”とも思えてきました。