ニッポンの単身赴任/重松清

 

ニッポンの単身赴任 (講談社文庫)

ニッポンの単身赴任 (講談社文庫)

  • 作者:重松 清
  • 発売日: 2005/10/14
  • メディア: 文庫
 

 

 人情的な小説で知られる重松さんが単身赴任のサラリーマンを追ったルポルタージュをまとめた本です。

 

 ワタクシ、2010年から単身赴任をしていたのですが、昨年3月末よりコロナ禍による出勤停止に伴う在宅勤務で、単身赴任に居ても仕方がないので自宅に戻り約一年間中途半端な生活を続けた挙句、とうとう会社が原則単身赴任を廃止するということで、十年に渡る単身赴任生活にピリオドを打つことになりそうなのですが、そういった感じの状況の記念と言うワケではないのですが、単身赴任についてのルポを取り上げた次第です。

 

 昨今は、ワークライフバランスがなんだかんだで、徐々に単身赴任は減りつつあって、コロナ禍で結構なコスト要因を嫌う企業がどんどん単身赴任を止めつつあるようですが、この本が執筆されたのは2000年前後という、バブル期のイケイケの時代はしぼみつつも、まだまだ社員をコキ使おうという空気が横溢していた頃で、単身赴任なんて当たり前だった時代のレポートとなっています。

 

 単身赴任というと、自由になって赴任先で好き勝手に遊ぶ人もおられるようですが、割とこの本ではマジメな人を扱っているようで、”単身不倫”については最終章でちょこっと扱っているだけで、読み物としてはそういうドロドロした感じのモノがオモシロいのかも知れませんが、個人的には単身赴任者ならではのココロのヒダみたいなものが感じられるこういう作風の方がありがたかったです。

 

 モチロン、単身赴任で家族と離れるのは寂しいですし、一人で生活する不安もありますが、ただただそういう寂寥感に苛まれるのも耐え難いですし、せっかくそういう機会があって赴任先に来たんであれば、それはそれなりに生活を楽しまなければ損というか、身が持たないというか、そういうビミョーな心もちを多くの人がお持ちのようで、そういうオジさん(一部女性も取り上げられていますが…)らしからぬココロの揺れというのにかなり共感です。

 

 この本では、それぞれのエピソードについて後日談が紹介されているのですが、多くの人が自宅に戻ることになっているのを、それはそれでウレシいのですが、どこか赴任先での生活に名残を感じていらっしゃるのが、今そういう境遇に置かれている身としては、ムチャクチャ共感できます。

 

 単身赴任で家族のキズナが深まるというのもワタクシに関する限りナットクですし、料理のレパートリーが増えるなど、一定のメリットもアリ、10年もいると最初から分かっていれば全力で拒否しますが、2年位であれば是非とも体験すべきなんじゃないかと思った次第です。