「やりがいのある仕事」という幻想/森博嗣

 

「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)
 

 

 昨日の『大人はどうして働くの?』が「やりがい」を強調されいたのに比べると、一見真逆のアプローチのように見えますが、森さんの仕事論といった感じの本です。

 

 こちらの本も「これからの働き方」というテーマで編集者から依頼されて書かれたモノだということですが、いつも通りビミョーに編集者が当初意図していたモノとは多少かけ離れたところからスタートしながら、それなりに読ませる内容のモノを提供するという職人技を展開されます。

 

 しかも、天邪鬼を自任される森さんに悩み相談を持ち掛けるという、かなり大胆に思える企画を展開されていますが、質問者を突き放すような回答をするのかと思いきや、一部にそういう期待通りの回答も見受けられるものの、意外な程、丁寧に誠実な回答をされているように見受けられます。

 

 タイトルがタイトルなんで(まあ、森さんらしいタイトルとも言えますが…)、突き放した感じの印象を受けがちですが、編集者が依頼したテーマに、他のエッセイと比べて割と忠実に沿っておられる部分があり、マスをターゲットにするよりも、ニッチに対応するような仕事が今後増えてくるということを指摘しておられるのが印象的です。

 

 そんな中で、自分がそういう状況に適応して、かつ「やりがい」を求めるにあたっては、森さんがこれまで紹介した著書の中でも何度か触れられている、自分が何を求めているのかということをキチンと意識した上で、どういう仕事をするかということが重要であることを指摘しておられて、特に自分の向き合うことが重要な選択となるようです。