歴史を活かす力/出口治明

 

 

 多くの歴史にまつわる著書を執筆されている出口さんですが、この本は如何にして歴史から教訓を得るかというところにフォーカスされ本です。

 

 コロナ禍の状況の中で、歴史上のスペイン風邪やペストのパンデミックの状況から教訓を得ようということが言われるようになっていますが、出口さん自身もAPU学長としての対応について、歴史から教訓を得て実行したことを冒頭でおっしゃっておられて、『コロナ後の世界を生きる』の中でも、如何にしてコロナ禍の収束に向けた教訓を歴史から得るかということを語られています。

 

 ただ、こういう非常事態だからと言うワケではなくて、『カベを壊す思考法』の中で「タテ(歴史)・ヨコ(世界)の軸」という思考のフレームワークを提唱されていたように、人生のあらゆる側面に歴史の教訓というモノを役立つようです。

 

 ただ、通り一遍の通史を知っているだけでは、なかなか自分が直面している問題に対する解決策のヒントを得ることは難しいようで、どういう観点で臨めば歴史から教訓を抽出できるかということについて、80の質問に答えるというカタチで示されています。

 

 昨今、世界のいたるところで排外的な風潮が広がっていますが、その点について、徳川幕府鎖国政策が長期的な閉塞感を通して、経済的な規模の縮小につながり、ひいては飢饉の遠因にもなったということを指摘されており、国際的な交流の重要性を強調されています。

 

 出口さんは、歴史上においてグランドデザインを描いて実行しようとした人物を高く評価されているということなのですが、政治家に取ってそういう資質が強く求められるということもありますし、そういう史観を持つことがバランスのとれた思考につながるんじゃないかということを感じさせられます。

 

 かなり歴史についての見方が変わるんじゃないかと思いますので、是非一読の程を!