なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか/山下柚実

 

 

 地方の一私大で、偏差値的にはそれほどレベルが高いワケでもない「近大」が、なぜ志願者数日本一になったかという秘訣に迫った本です。

 

 この本が出版されたのは2016年で、2014年に初めて近大が志願者数日本一になったのを受けて企画されたようですが、その後、今のところ集計が上がっている2020年入試に至るまで7年連続で志願者数日本一になっています。

 

 ワタクシが大学を受験した30数年前は、関西の私大でいうと「関関同立」「龍甲産近」と言って、近大は第二グループにギリギリ”入れてもらっている”ような位置づけで、まあ、そこまでに収まったら…くらいの大学で、割とヤンチャなイメージの強い大学でした。

 

 それがこの本の紹介するところによると、現在では女子学生の志願者数も急増しているということで、割と関西の私大では珍しい理系に多数の学部を持つ大学でありながら、今や男女の志願者数の比率は半々だということです。

 

 元々近大は「実学」志向ということで、「近大マグロ」などの活動でもうかがえるように、企業との連携プロジェクトも多く、多くの大学の”口だけの実学志向”とは一線を画しており、「使える人材」を生み出すことに着々と成功しているようです。

 

 さらには、女子学生を受け入れやすいように施設も整えたり、受験者や入学者に向けたイベントなども、かなり「お客様」に向いた施策を打ち出しているようで、そういうマーケティング的な要素でも組織的な取組ができているようです。

 

 元々近大は、学力とは違う尺度で評価されるような大学を目指そうということで、前述のような様々な施策を成功させてきたワケですが、近年の施策の成功も相まって、学力レベルでもかなりの進化を遂げているということで、今や第二グループをリードする存在であるだけではなく、第一グループの末席と言われるわが母校関大を食う勢いだということで、意外というか寂しいというか…

 

 それにしても、今後そういう学力だけの人材よりも、そういった学校で学ぶ方が長い目で見て有用な人材になることは明らかであり、日本企業の学歴至上主義も崩れつつある今、近大はもっともっと躍進して行くような気がします。