偉人メシ/真山知幸

 

 

 歴史上の偉人からボブ・マーリービートルズまで著名人がどのような食事をしていたかを紹介した本です。

 

 もう少し、それぞれの偉人が生きた時期との食文化との絡みなんかをもっと多めに取り上げてくれていたら、もう少し「深い」本になったんじゃないかという多少残念な面はありますが、まあ、トピックとしては面白いモノになっていているのですが、ちょっとそれ一本で300ページ近くというのは、少し食傷気味だったのも否定し難い所です。

 

 多少取り上げられている食文化との絡みですが、冒頭に紹介されている「合戦メシ」のパートで、1日3食となったのは合戦時の栄養補給という意味合いがあったのがキッカケのひとつとなったとか、合戦時の保存食、かつ効率的な栄養補給の手段として梅干しや鰹節が考案されたというのが興味深い所です。

 

 また、江戸時代に外食文化が花開いたのは1657年の明暦の大火を契機に家庭での火気の使用が制限されたことが発端だということで、その頃はちゃんとした店舗ではなく、屋台みたいなモノでの運営がほとんどだったということで、江戸東京博物館でも紹介されていましたが、握り寿司や天ぷら、そばなどバラエティに富んだメニューが提供されていたということです。

 

 個別の偉人のエピソードでは、キュリー夫妻やアインシュタインが研究に没頭するあまりかなり貧弱な食生活で、キュリー夫人なんかはそのあまり栄養失調となったということが印象的なのと、ルイ14世、16世親子の凄まじいまでの大食漢ぶりでしょうか…

 

 まあ、色々とグチってはいますが、小ネタとしては結構楽しんで読めますので、職に興味のある人は是非一読の程を…

次のテクノロジーで世界はどう変わるのか/山本康正

 

 

 昨日に引き続きITネタですが、現時点でIT技術の進化がもたらす我々の周囲で起こりつつある変化を紹介した本です。

 

 この本の著者である山本さんはアメリカで金融機関やGoogleでの勤務を通して、テクノロジーの進化を目の当たりにされてきたということで、最新のテクノロジーがもたらす社会の変化を語るのに最もふさわしい存在だということのようで、現在大きな変化をもたらしつつあるテクノロジーとして、5G、クラウドビッグデータ、AIと併せて、今後大きな変化をもたらすであろうブロックチェーンについて語られています。

 

 今起こりつつある変化として、企業の業種という概念がかなり形骸化しつつあるということで、あらゆる企業がサービス業的な要素を増しつつあるということで、囲い込んだ顧客に対して、あらゆるサービスを提供するようなスタイルに変わりつつあるということと、経済学が、あくまで限られた情報を元にした「予測」であったものが、ビッグデータを基にすると、「今」起こりつつあることをリアルタイムに影響を分析できるようになってきているということで、その概念が根底から覆りつつあるようです。

 

 また、ビットコイン導入当初の混乱もあって、まだ日本ではそれほど普及が進んでいないブロックチェーンですが、アメリカなどでは既にかなり広まっているようで、日本でもその流れは不可避なようで、そうなると金融機関の存在意義がかなり形骸化されてしまうようです。

 

 書かれていること将来像自体、正直まだピンとこないほどのドラスティックな変化なのですが、かなり説得力のある「予言」で、これらのテクノロジーの凄まじい影響力に驚かされるばかりです…

ビッグデータ探偵団/安宅和人/池宮伸次 Yahoo!ビッグデータレポートチーム

 

 

 Yahoo!ビッグデータ分析チームがビッグデータにどんなことができるかを紹介した本です。

 

 ビッグデータがクローズアップされるようになってある程度の時間が経過しましたが、マーケティングとかに従事されている方々を除けば、それがどういう風に活用されているかということをイメージできる方はそれほど多くないんじゃないかとも思えるところがあって、この本では割と身近な例も含めて紹介されていて、かなり興味深い所です。

 

 メインの著者の安宅さんがYahoo!ビッグデータレポートチームの統括ということで、チームメンバーが興味を惹きそうなネタを取り上げて分析した結果を紹介していて、冒頭で新社会人がYahoo!で検索した実績のビッグデータを引き合いにして、4月には「モットー」、5月に「辞めたい」、6月に「恋活」に関する検索をしていることを指摘されていて、気負って働き始めて、一旦疲れて、次第に慣れて行って余裕が出て、生活を楽しむようになっていることを示していることを紹介されています。

 

 また、ビッグデータを今後どのように活用して行こうかという方向性についてもいくつかのジャンルで紹介されていて、実際に既に活用されている路線検索のビッグデータを基にした混雑予測と、回避の案内や、究極的には人々の検索結果に基づく経済予測の指標を立ち上げることも視野に入れられているということで、かなり適用範囲や有効性は高そうです。

 

 個人情報が特定されるワケじゃないのにビッグデータを取られることに否定的な人が少なからずおられますが、取る側もこういうメリットをどんどんと訴求して、もっともっと充実させていって欲しいな、と思えるモノでした。

新型コロナ時代のランニング/金哲彦

 

 

 NHK-BS1の『ランスマ』やマラソン中継の解説などでもおなじみのランニングコーチの金哲彦さんによるコロナ禍を契機にしたランニングのススメです。

 

 個人的には、コロナ禍で2~3年大会から離れざるを得なくなって落ちてしまった走力をコロナ前のコンディションに戻すノウハウなんかを期待したのですが、そういうモノではなく、コロナ禍をキッカケにランニングを始めて見ませんか!?と言う主旨です。

 

 この本が出版されたのが2020年9月ということで、まだまだコロナ禍の出口が見えない状況で、強制リモートワークで家から出なくなって、出歩くことすらままならない状況だったと思われます。

 

 そんな中で政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身会長がジョギングくらいだったらしてもいいよ、みたいなことを言われたのを契機に、それならばちょっと走ってみようか!?と思う人もいたようですが、なかなか長続きする人は少なかったようで、ランニングの恩恵と継続するコツみたいなものを紹介されています。

 

 リモートワークを経験されている人は分かると思うのですが、通勤って意外と体力を使っていて、ずっと閉じこもりっぱなしになると、体力が目に見えて落ちて行き、それでも食事の量はそれほど減らないということもあって、ブクブク太ってしまうことにもなりかねません。

 

 また家に閉じこもっているとストレスもたまっていくということで、そういう心身の健康を保つのに最適なのがジョギング/ランニングだということです。

 

 ただ、多くの人が何気に始めたジョギング/ランニングが続かないのは、学生の頃に運動していたイメージのまま走ってしまうからのようで、それよりも落ちた体力の中で走り続けようと思ったら、始めはウォーキングをして、徐々に間に軽いジョギングを挟んで、段々ジョギングの時間を伸ばしていくようなカタチで、ずっとランニングできるようになるまでやってみることがコツのようです。

 

 ボチボチ大会も再開されつつありますし、いずれはフルマラソン!という目標を持てば、より走るモチベーションも高まると思うので、是非取り組んでみてください!

マンガでわかる日本仏教13宗派/石田一裕

 

 

 日本仏教をマンガで紹介するということで、13宗派それぞれの特徴や名僧の事蹟、お作法などについて紹介されています。

 

 そもそも13宗派ということなのですが、これ全部言える人ってちょっとスゴイかもしれません。

 当然ワタクシも知っていると思っていたのですが、鎌倉仏教の浄土宗、浄土真宗時宗臨済宗曹洞宗日蓮宗は結構日本史の授業の中でもねっとりと取り上げるので、多くの人がご存知でしょうし、平安仏教の天台宗真言宗についても同様にクリアかな!?と思うのですが、奈良時代法相宗華厳宗律宗や、江戸時代の黄檗宗になるとアヤシい人もいるかと思います…ワタクシはここまではクリアしたのですが、平安から鎌倉にかけての浄土系の融通念仏宗というのがあるそうで、これは全く知りませんでした。

 

 ただ13宗派というは主要な系統に限ったもので、明治維新前に成立していた「伝統仏教」が13に分かれていたことに由来するだけで、数え方にもよるのでしょうけど156宗派あると言われるそうです。

 

 教義とか信仰の形態とかそれぞれの宗派に言及はできませんが、僧侶の呼び名についても宗派によって違いがあるようで、よく言う「和尚さま」というのは浄土宗や天台宗真言宗法相宗臨済・曹洞の禅宗に限られるということで、浄土真宗などでは「ご院主さま」と言うんだそうです。

 

 葬式のお作法についてもかなり違いがあるということで、何も言わなければ江戸時代に特に徳川家に保護されて檀家制度で葬式を取り仕切ることの多かった曹洞宗のしきたりに則って進められてしまうようですが、宗派ごとのこだわりがある人には要注意のようです。

 

 ワタクシを含めて現代の日本人は各宗派ごとの細かい差異には無頓着ですが、そういうところも認識すべき場面もあるだということを覚えとかないとヤバいこともありそうですね!?

飛び立つ季節/沢木耕太郎

 

 

 『深夜特急』で知られる沢木耕太郎さんの日本国内の紀行文である『旅のつばくろ』の続編です。

 

 前作の出版が2022年4月ということで、コロナ禍突入直後の出版で、実際の執筆時期はコロナ禍の影もない頃だったということで、全くそういう言及はなかったのですが、こちらはコロナ禍で外出も憚られる時期を経てのことで、気が向いたら好きなところに出かけられる自由についてあとがきでは言及されてはいるものの、それぞれのパートの執筆の時期は明確ではなく、通常運転の旅となっています。

 

 とはいいながら、これまでの紀行文と趣が異なるのが、『深夜特急』でアジアで足踏みはしたもののインド以降ひたすら西へ西へと向かったことでも知られるように、個人的には前のめりな印象のある沢木さんが、過去の旅をなぞるようなカタチの旅が主要なモチーフになっているのが印象的です。

 

 特に、初めての旅だとこれまでの著書の中でも再三紹介されている16歳の時の東北旅行の旅程に沿った旅を何度もされていると共に、文豪に倣って新田次郎文学賞を受賞した『一瞬の夏』の執筆のために自らを缶詰にした旅館を再訪したり、お父さまの出身地である両国を訪ねたりと、沢木さんらしくないとも思える回顧録的な旅行が目立ちますが、だからといって沢木さんも歳を取ったもんだ、という印象はあまりなくて、単なる題材のひとつにすぎないのかな、という気もしますが、コロナ禍明けの旅行は、そういうセンチメンタル・ジャーニー的なモノを勧められているような気もします。

 

 このシリーズ、まだ続くようですので、今後も楽しみにしたいところです。

孤独を生きる/齋藤孝

 

 

 齋藤センセイはこれまでも『50歳からの孤独入門』『孤独のチカラ』など「孤独」をテーマにした著書を出版されてきましたが、これまである程度ターゲットとなる年齢層を絞ったカタチのモノとなっていたのですが、この本はある程度、どの年齢層にも参考になる内容となっています。

 

 この数年はコロナ禍に伴う在宅で孤独を感じる人が急増しているでしょうし、かなりメンタル的にも問題を抱える人が出てきていることでしょう。

 

 ただ、そもそも現代日本においては、純粋に「孤独」となる状況というのはあまりなさそうで、それよりも各個人が「孤独」だと感じる「孤独感」が多くの人のメンタルを蝕むことになっていることが多いんじゃないか、という指摘をされています。

 

 かつて孤立していてそういうノウハウには長けていると自認されている齋藤センセイが「孤独感」を軽減するための様々な方策を紹介されていて、気休め的なモノもあるのですが、やはり根本的な対策としては、自己肯定感を高めることが重要だということで、割と日本人は自分にキビシい人が多いようには思えるところを、ちゃんと自分を評価してあげることを心掛けるべきなんだそうです。

 

 また、齋藤センセイおススメの「孤独感」払拭対策は、何と言っても読書だということで、ご自身は『福翁自伝』や『氷川清話』で福沢諭吉勝海舟を勝手に友として会話していたということで、そういうことで自分を高めるという要素もあるようです。

 

 さらには、私小説などを中心として文学の中には孤独が重要なテーマとなった著作が数限りなくあり、対処法を学べるという側面もあるようです。

 

 以前はそうでもなかったのかも知れませんが、昨今の日本人は極度に「孤独」を恐れているようにも思われ、結構それはそれで愉しみもあるんだよ、ということをこういう本を読んで再認識してもらいたい気もします。