感動!ブラジルサッカー/藤原清美

感動! ブラジルサッカー (講談社現代新書)

感動! ブラジルサッカー (講談社現代新書)


 ブラジル代表を密着取材し続けている藤原さんのブラジル代表
に関する本です。
 ブラジル代表(セレソン)は、いわば国の象徴のようなもので、
サッカー選手がそれにかける意気込みというのは、ヨーロッパ諸国
とはちょっと趣を異にしているようです。
 この本は2006年出版で、ドイツW杯直前に書かれているようなの
ですが、主に日韓W杯前後のことをメインに扱われています。

 その中で、いろんな角度からセレソンでプレーすることの意義を
書かれていますが、特に印象的だったのが、「セレソンのシャツを
脱ぐということ」と題して、フランスW杯から日韓W杯に至る時期
ロマーリオのことについて書かれている章です。
 私、フランスW杯当時は、サッカーを見始めたところで、セレソン
が強いことは、もちろん知っていたのですが、ブラジルのサッカー
選手にとっての位置づけや、社会的な役割みたいなことはまったく
知らなかったので、ロマーリオが怪我でフランスW杯に出れないと
決まったときの記者会見での号泣があまり理解できていませんでした。
 その後も、かなり強引なセレソンへの復帰運動をしていたのを、
どっちかというと否定的に見ていましたが、この本を読んでなぜそ
こまで執着するのかが、ちょっと理解できた気がします。

 あと、印象的だったのが、セレソンになるような選手の社会的な
役割への意識の高さです。
 割と、貧しい出自の人が多いせいか、自分がセレソンに選ばれる
ような立場になったことを感謝し、何らかの還元をしたいと思う
人が非常に多いようで、ごく自然に慈善活動に取り組んでいること
に、非常に感銘を受けました。

 ブラジルは、依然と比較すると目覚しい経済発展を遂げています
が、変な話、そのことがサッカーに、ネガティブな影響を与えない
かと、ちょっと心配になってしまいます…