異端者たちのセンターサークル/海江田哲朗

 東京ヴェルディの育成組織をテーマにした本です。

 この本の冒頭に意外なことが書かれていました。
 これまで幾多の日本代表を始めとする名選手を生み出してきたヴェルディ
育成機関ですが、未だにワールドカップのピッチに立った選手を輩出していな
いそうです。(森本が南アW杯のメンバーにはなりましたが、結局ピッチには
立っていません…)

 個人的には、まあ、めぐり合わせでそんなこともあるよ、と思うのですが、
著者は、単なる偶然ではなくて何か根源的なものがあるはずだ、という仮説の
下に取材をされたようです。

 小見さんや川勝さん、戸塚さんや都並さんと言った、日本サッカー界の中枢
をなす人たちが、ヴェルディの育成機関出身ですが、そのころは、ジョージ
与那城やラモスと言ったプロ中のプロを間近で見ることで、サッカーの厳しさ
を知らず知らずのうちに、身に着けて行ったのかもしれませんが、年を経るご
とにそういう人たちが減り、「サッカーがうまけりゃいいんでしょ。」的な
斜に構えたスタイルだけが残り、本質が消え失せていった、という感じのこと
を後半での述べられています。
 傍証として、サッカーの育成機関としてヴェルディと並び称されるガンバの
育成機関の基礎を築いた、上野山さんが、ピッチ外のヴェルディのユースを
反面教師とした、といったコメントを紹介されています。

 いくら優れた機関といっても、精神を受け継いで行くことの難しさを痛感
させられます。