凛と咲く/日々野真理

凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦

凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦

 長年にわたり、なでしこJAPANを取材されていた方による、2011W杯優勝への軌跡を
描いた本です。

 表面上の記述とかは、割とサラっと試合の経過を流しているだけで、そんなに選手との
個人的なつながりを元にして、心象風景を深く描く、って言う感じではないのですが、著者
の情念というか、積年の宿願と言うのが乗り移っていて、否が応にも、これまで女子サッカー
に関わってきた人たちの想いを感じさせられます。

 この本を読んでいて思ったのが、このなでしこJAPANの背負っていたものの重さ、と
言うことです。
 実際、W杯のグループリーグの時には、そんなに世間的な期待も盛り上がりもなく、ドイツ
に買ったあたりから急激に注目が集まった感じに記憶しているのですが、彼女たち自身は、
女子サッカーのこれまでの積み上げと、今後の繁栄、そして東日本大震災で傷ついた人たちを
励ます、という、重い重い荷物を自ら進んで背負い、しかもあんなに明るく、結果として
偉業を成し遂げたことに、驚きを禁じ得ません。

 印象的だったのが、最後に、宮間あやへのインタビューがあったのですが、何が成功の
原因だったのでしょう、という問いに対して、それが明確であれば、もう一度優勝できる
でしょう、と答えていたことです。

 確かに、奇跡のバランスがあったにせよ、アツい想いと冷静な判断、そういうことを
高度に兼ね備えていたことが、ひとつの要因なのかな、と思わされました。