世界は日本サッカーをどう報じたか/木崎伸也

 この本は、2010年南アフリカW杯の間に、世界のメディアが日本のサッカー
をどのように報じたか、ということをまとめた本です。

 決勝ラウンド1回戦でパラグアイに負けた後本田選手が、「日本人とパラグ
アイ人以外、見たいとも思えないような試合をしてしまった」と言う主旨の
発言をしたことを、ワタクシも覚えていますが、実際に、スペイン向けの実況
で、両チームに対して、「勝とうという気があるのか?」的な辛らつなアナウ
ンスがあったようです。

 岡田監督がW杯直前に、何とか勝つために守備的な戦術に変更をして、決勝
トーナメント進出という結果を得たものの、緒戦のカメルーン戦や前述のパラ
グアイ戦など、ヨーロッパ諸国の報道では、「臆病な戦い方」という酷評を
得たようです。

 著者の木崎さんはこれについて、決して単純に日本を貶めているということ
ではなく、やればできるはずなのになぜやらないんだ!という怒りだとおっし
ゃっています。

 現に、決勝トーナメント進出を決めたデンマーク戦のパフォーマンスについ
ては、カメルーン戦を酷評したドイツメディアも賞賛の声を上げたようですし、
前述のパラグアイ戦の実況の冒頭では、デンマーク戦を引き合いに出して、
試合への期待のコメントを寄せていたようです。

 勝ち負けというのは時の運もあるので、負けても仕方がないと言う部分も
あるのですが、できることをしないで最初から弱者の戦術に逃げ込んだ、と
いうことに対して、サッカーをよく知るヨーロッパのメディアからの「怒り」
があったのでしょうか…

 裏返していえば、それなりに日本のサッカーが評価されていると言うこと
で、世界的に攻撃的なサッカーが勢力を盛り返している今、次のブラジルW
杯では、堂々と正攻法で世界を見返してやりたいものですね。