残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法/橘玲

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

 先日紹介した『(日本人)』のそもそもの原型と言うか、日本人に限らず、
世界レベルで語ったのがこの本のようです。

 なので、社会進化論的な話は『(日本人)』と共通で、比較優位論をベース
にしたグローバル経済の進展と言うものは不可避の現象で、それに対して個々
人としてどうな対応するか、というお話になります。

 で、まず橘さんがこの本を書かれた動機というのが、昨今の自己啓発本ブーム
に対して感じた違和感だと言うことです。
 その中で、香山リカさんが、『しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (幻冬舎新書)
の中で、「勝間和代を目指さない」と書かれたことをきっかけにした論争(結局、
勝間さん、努力で幸せになれますか』と言う対談本にまで発展)を取り上げて
おられます。

 確かに、グローバル経済において、人材の質の判断としては「能力」を基準に
することが道徳的に正しい唯一の手段なんで、そういう意味で、「能力」を向上
させると言う意味で、勝間さんが主張される「努力」は、対処の方向性として
正しい、と橘さんもおっしゃっています。

 ただ、多くの人が、そういう「努力」をできるのか、ということと、「努力」
した結果、「成功」を手にして「幸せ」になれるのか、ということについて、
橘さんは、懐疑的な立場を取られています。

 と言うのも、金銭的な成功と言うのが、必ずしも幸せにつながらない、
ということのようです。

 そこで、「成功」だと言える「たったひとつの方法」が、自分が好きな分野
で「評判」を得ることと、それをビジネスにつなげることだとおっしゃいます。

 人間の本能として、「仲間になる」ということに根ざしていますし、しかも
それが「好きなこと」であり、それで経済的なものももたらされると言うこと
です。

 いつもの得体の知れない感は薄いですが、相変わらず圧倒的な論理で、
興味深い結論まで一気に読まされました。

 それにしても、神田昌典さんの講演といい、『ぼくはお金を使わずに生きることにした
といい、橘さんまでよく似たことをおっしゃっているということで、いよいよ、
そういう社会になるのかな、と思わされました。