国家の品格/藤原正彦

国家の品格 (新潮新書)

国家の品格 (新潮新書)

 8年前に出版されて話題を読んだ本ですが、自宅でまだこのブログで
紹介してない本を探しているうちに見つけたので、再読してみました。

 最近、中国や韓国との関係が良くないということもあって、妙に国粋
主義的な考え方が幅を利かせるようになって来ているなかで、こういう
本を紹介することに躊躇する部分もなきにしもあらず、なのですが…

 当時は、段々と日本経済も下り坂にあった中で、日本人に自信を取り
戻してもらいたいという意図があったのかもしれません。

 でも、再読してみると手放しの日本人礼賛というわけではなくて、
日本において、欧米的、特にアメリカ的な、身の回りの問題を全て
「論理」で解決していこう、という考え方が台頭していっていること
への警鐘、と言うのが第一の趣旨だと考えた方が健全な気がします。

 論理というのは、アメリカのように、多くのバックグラウンドを持つ
人の集合体である社会において、ある程度客観的に、というか最大公約数
的に納得してもらえるように問題を解決する上で便利なツールであること
は確かなのですが、それを万能なものとして使おうとすると非常に危険な
側面があるということをおっしゃっています。

 特に、論理を展開する上で不可欠な、「開始点」の設定がまずければ、
正しく「論理」を展開すればするほど、「正しく」誤った結果が待ってい
るということです。

 そこで、論理というツールを使うのは、国際化が進む社会の中で、ある
程度仕方がないとして、「開始点」を適切に設定するために重要な、豊か
な「情」を持つことが必要だと、おっしゃいます。

 それこそが、豊かな文化を持つ日本の武器であり、責任でもある、と
言うことで、最近、やたら国際化ということで、英語が重視されています
が、そんなことよりも自国の文化をちゃんと理解することが、余程重要
だとおっしゃいます。

 ということで、単なる国家礼賛ではない、と思いつつも、こういう本を
妙なかたちで利用しようとする人はいるんだろうなあ、と…