増補版 祖国と母国とフットボール ザイニチ・サッカー・アイデンティティ (朝日文庫)
- 作者: 慎武宏
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/06/07
- メディア: 文庫
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鄭大世、安英学、梁勇基、そして李忠成と始めとする在日朝鮮人から
フットボーラーとして活躍した、もしくは志半ばにして諦めざるを得な
かった人たちを描いた本です。
国籍や差別など過酷な運命に見舞われながらも、自身の置かれた環境
と折り合いをつけ、前向きに状況に立ち向かう姿に励まされるとともに、
南アフリカW杯のブラジル戦での国歌斉唱時の鄭大世の涙を思い出して、
こういうことが背景にあったのかと思うと、激しく心を動かされました。
北朝鮮代表としての道をたどった者、韓国代表としての道をたどった
者そして、日本代表としての道をたどった者、それぞれが苦難と立ち向
かいながらも、一歩一歩前進していく姿に感動を覚えます。
印象的だったのが、安英学をはじめとして、これだけの辛酸を舐めな
がらも、「在日として生まれてよかった」と、多くの人が語っているこ
とです。
確かに、厳しい体験をしながらも、多くの素晴らしい出会いがあった
ことも、「在日」ならではだと言っています。
ある意味、その「結実」とも言える、2005年のドイツW杯最終予選の
日本代表対北朝鮮代表の試合から始まって、文庫本でのあとがきの、
南アフリカW杯のブラジル戦で締めくくられるのですが、激しいシンパ
シーを感じずにはいられない本でした。