TOKYOオリンピック物語/野地秩嘉

TOKYOオリンピック物語

TOKYOオリンピック物語

 1964年の東京オリンピックを裏方として支えた人たちを描いた本なんですが、
グラフィックデザイナーやコンピューターのエンジニア、警備保障会社、各国
料理のシェフなど、それまで産業として成り立っていなかったのが、東京オリ
ンピックをきっかけに、ビジネスとして認知されたというか、成功していった
ものと、ニュース映画と言う、「東京オリンピック」を最後に役割を終えた
ものが対比的に描かれています。

 グラフィックデザイナーや各国料理のシェフなど、諸外国からは、まともな
扱いを受けていなかったものが、東京オリンピックで大きな注目を浴びること
で、その能力が世界で大きく認められるようになったものや、オリンピックの
記録をリアルタイムで扱うといった、世界でも例のないことに取り組んで、見
事成功させるなど、自分たちの領分で懸命に使命を果たして、東京オリンピッ
クを成功させて、日本を世界で認められるようにしようという、いじらしい程
の努力が胸を打ちます。

 そして、東京オリンピックを成功させるということと、それぞれの分野に置
いて、ビジネスとしての大きな展開に繋がっていきます。

 言ってみれば、「国家としての青春期」を描いた清々しさを、ヒシヒシと感
じさせられます。

 2020年の東京オリンピックにおいても、何らかの形で、こういう国全体とし
ての、「青春」が見れたらいいなあ、と切に思わされました。