日本人の誇り/藤原正彦

日本人の誇り (文春新書)

日本人の誇り (文春新書)

 8年位前に出版されてベストセラーになった、『国家の品格 (新潮新書)』の
続編と言うべき本なんでしょうか…

 正直、この本の言いたいことと言うのは、全体で250ページほど
あるうちの、最後の15ページほどなんだと思うんですが、それを
言うために、延々215ページほどにわたって、アメリカによって
歪められた日本人の「卑屈な史観」を矯正するための「正しい」
史観を江戸後期〜サンフランシスコ講和条約にわたって説明され
ています。

 中国や韓国とギクシャクし始めたここ数年、日本人のよさを見
直す論調が台頭していますが、それ以前は、自分の国に誇りを持
てない国民だったのですが、実は、それはアメリカ人に押し付け
られたものだというのが、この本の主張です。

 その結果、中国や韓国に対しても不要なまでに謝罪を強要され
平身低頭を強いられた、と書かれています。

 この本では、日韓併合の「手続上」の正当性や、南京大虐殺
の根拠のなさというものをあげて、これが日本を、再び欧米の
主要国を脅かす存在にならないように、精神的にダメージを与え
るようにした、というのがこの国の主張です。

 5ヶ月くらい前に、『国家の品格』を紹介して、この時期に、
こういう国粋主義的な主張をするのは危険だなあ、という話を
させていただきましたが、この本は、そのまだ先を行く危険さ
があります。

 確かに、日本が、固有の「和を尊ぶ」姿勢の重要さを世界中に
訴える、というところは賛成なのですが、中韓との軋轢の中で、
妙に自身の「優位性」ばかりが取り上げられるんじゃないか、と
いうところに危うさを感じます。