知的経験のすすめ/開高健

 ひところ開高健さんの本に、文字通り「溺れて」いた時期
がありますが、自宅に帰って懐かしくなって、ホントに久し
ぶりに手に取ってみました。

 この本は、開高さんの「教育論」なんですが、根源的には、
教育というのは、子供たちに生きる術を身につけさせるもの
なはずなんですが、昨今体制が自分たちの都合のいい市民を
つくるための「教育」ばかりが重視されることになって、
「頭」ばかりが重視されることになっています。

 ただ、それが根源的に「生きる術」を身につけることに役
立つのか、というと、甚だ疑わしいのであって、根源的な
意味では、自分が経験してきたことそのものが「教育」なん
じゃないか、ということで、開高さんが戦中戦後を生き抜い
てきた「経験」が語られます。

 壮絶な経験には違いないのですが、どこかおかしさを感じ
させながら語られるのですが、これを読んでいると、体制の
「教育」というのが、敗戦時の180度のパラダイムシフトを
経験している世代からすると、如何に虚しいものであるかを、
痛切に感じさせられます。