実況席のサッカー論/山本浩×倉敷保雄

実況席のサッカー論

実況席のサッカー論

 日本のサッカー実況をイチから作り上げてこられた山本さんと、
近年、ヨーロッパサッカーを中心に、豊富な知識をベースにした安
定感のある実況で定評のある倉敷さんの、サッカーの実況にまつわ
る対談を収めた本です。

 倉敷さんが“レジェンド”山本さんに、これまでの経験を「聞く」
といった感じがベースになっていますが、創世記からのサッカー中
継の生き字引の経験の深さを感じさせられます。

 スポーツ実況というと、野球しかベースのない中で、ヨーロッパ
のサッカーの実況や、野球の実況を取り入れながら、「日本のサッ
カー中継」を作り上げられてきた過程が少しずつ語られます。

 その中で、どの程度テクニカルなことを語るのか?とか、冷静な
伝達者としての姿勢と、「ファン」としての姿勢をどんな割合で
語ると、より視聴者に伝わるのかとか、クセの強い解説者を如何に
イナすのか(笑)とか…そこまで、いろいろと考えて話されていた
のか、と感動を覚えます。

 また、1985年のメキシコW杯予選の日韓戦や、1997年の「ジョホ
ールの歓喜」の時の、冒頭の山本さんの名ゼリフの背景なんかも
語られます。

 こういう視点のサッカー本が出されるところに、日本のサッカー
文化の深まりを感じさせられます。