「Jリーグ」のマネジメント/広瀬一郎


 各種のスポーツイベントの運営にかかわってこられた方の、Jリーグ
の立ち上げから軌道に乗るまでの運営について、どっちかというとテク
ニカルな側面にフォーカスした本です。

 マーケティングとかそういう側面については、博報堂に委託した部分
もあり、ある程度プロフェッショナルな匂いがするのは、当たり前って
言えば当たり前なのですが、加盟のルールやインフラに関する要求部分
など、制度設計にあたる部分について、企業チーム上がりの幹部の方々
が親会社での勤務経験を活かして、というにはあまりにもカッチリとし
ていて、かつ将来起こりうるリスクも視野に入れていたとしか思えない
微に入り細を穿つ内容には驚嘆を覚えざるを得ません。

 この本は、2004年ということで、Jリーグ10周年直後に出版された本
なのですが、一部チームの撤退といった事態はあったものの、リーグ自体
は、今年からJ3も生まれるなど、「失われた10年」といわれる経済の
停滞の中で、着々と基盤を強固にしてきたことに著者も手放しの賞賛を
送られています。

 さらに、W杯出場の常連国となり、決勝トーナメント進出を現実的な
目標とできるような強化を図れたことも、成功の一つの要素として忘れ
てはいけないことでしょう。

 でも、100年構想のなか、サッカーを新たな文化として取り込んだこと
について、もう少し積極的に評価されてもいいんじゃないかと思うので
すが、そのためにもこういう本を積極的に評価したいものですね。