負ける力/藤原和博

(014)負ける力 (ポプラ新書)

(014)負ける力 (ポプラ新書)

 「負ける力」というタイトルの経緯はあとがきに書かれているので
参照いただくとして、でも、あんまり「負ける」ということと、イメ
ージ的に直結しない内容です。

 「ベクトル」を合せて、自分だけでは実現できないレベルのことを
実現する、ということがメインのテーマになっており、まあ、今まで
読んできたような内容のことを、「ベクトル合わせ」という切り口で
語る、ということなんで、藤原さんの本を何冊も読んでいる方は、
またか、ということになるのですが、切り口が変わったがゆえに、
そうだったのか、ということもあるので侮れません。(とはいえ、
大部分は、あーまたか、ということなんですが…)

 ただ、自分と方向性が違うからといって単に反発するとか、交わら
ないとかということではなく、常に相手のベクトルを意識して、どう
補助線を引いたら、相手との相乗効果で、どういう成果をだせるのか
という意識をしておくことによって、妙に苦手意識を持つこともなく
なりますし、大きな成果を得ることもできるということで、その補助
線の引き方を色々と紹介されています。(まあ、過去に書かれていた
ことを、そういう切り口で見る、ということですが…)

 ちょっとメインテーマとは関係ないのですが、教育のところで、以
前は、7割の子供の能力を引き上げるようにということで行ってきた
教育が全体の押し上げにつながっていたようですが、最近は、子供の
能力の差、親の財力の差などの要因で、高いレベルの子と低レベルの
子と二つの山ができていて、平均的な部分に山ができず、そこにフォ
ーカスしていた、従来の考え方の教育の効果が著しく低下していると
いうことです。

 まあ、面白いっちゃあ面白いところもあるのですが、ちょっと引き
出しが枯渇してませんかね…ブレないところはいいんですけどね。