ストーリーとしての競争戦略/楠木建

 以前紹介した『仕事はストーリーで動かそう』のようにマーケティング
の手段としてストーリーを活用しようとする動きがありますが、この本は
ちょっと戦略レイヤーが違うということもありますが、ある事業において
長期的に利益を出すための「競争戦略」における「ストーリー」について
のちょっと学術的な本です。

 得てして企業の企画部門が作る競争戦略というのは、「静止画」の連続
になっていて、複数の「静止画」の間の関連が見えにくいので、結果とし
て、顧客や取引先を含めて、その事業に関わる人に当事者感を抱いてもら
えないことで、その事業自体がイマイチうまく行かなくなってしまう、と
言う側面があるようです。

 翻って、よくできた競争戦略というのは、始めっからストーリー仕立て
にしようとかって意図しているわけではないのに、結果として戦略要素
同士の関連が時系列でのストーリーになっている、ということで、スター
バックスやアマゾン、マブチモーターなどの例を挙げて、優れた「競争戦
略」のストーリー性を紹介されています。

 そういう優れたストーリーには、優れたコンセプトが内包されている
んですが、何が優れたコンセプトなのかというと、そのなかに何か、その
業界において非常識とされているものが含まれていることだ、とおっしゃ
られています。

 そういう「非常識」を含むことによって、競合他社がそもそもマネを
しようとしないので、長期的に競争優位を保つことができる可能性が高い
ということです。

 500ページ余りもある大著で、回りくどいところも無くは無いので、
決して読みやすい本ではありませんが、企業の経営層にある方々は、是
非一度手に取られてみては如何でしょうか?